私が留学生として初めて日本の地を踏んでから、早くも19年になります。

１年間日本語を勉強したあと、ホテル専門学校を卒業、関西を中心にいくつかのホテルで経験を積んでまいりました。その間、結婚をし、子供にも恵まれ、念願のマイホームも購入。このまま何不自由ないサラリーマン生活を日本で送り、定年後はネパールに帰って悠々自適の暮らしをしよう……、と普通ならば考えるところですが、わたくしは起業の道を選びました。それには、二つの理由があります。

一つは、生まれ育った祖国であるネパールと、私を受け入れ、成功への機会を与えてくれた日本との懸け橋になるような仕事をしたいという気持ちが芽生えたことです。日本は今、少子高齢化社会という未曽有の社会変革を経験し、その結果、あらゆるセクターにおいて人手不足が深刻な問題となっています。一方で、ネパールでは多くの優秀で真面目な若者が、就職先を求めています。勤労意欲のある人材を、人手不足で困っている企業に紹介することで需給バランスをはかり、双方のお役に立つことができれば両国の経済発展、親善関係に貢献できるのではないかと考えました。

もう一つの理由として、人生の最後に後悔することを残したくないという思いがあります。正直いって、今のままでも何ら不自由はありません。そのため人からは、何もリスクを背負ってまで起業することもないだろうと言われ、自分でも何度もそう思いました。しかし、人としてこの世に生命を与えられ、果たして自分の幸福だけで満足していていいのだろうか、死ぬ間際になって後悔しないだろうかと自問したとき、やはりそれではいけないと思ったのです。

物質的な富や、社会的な地位などといったものは、天国に持っていけません。持っていくのは、生きている間にどれだけ「人のために貢献」できたかという、自分に対する誇りだけだと思います。自分や自分の家族のために生きるのは比較的簡単ですが、他人のために生きることは、勇気が要ります。しかしこれは必要なことだと思うのです。

このような次第で、私はこれから残り人生を「人の役に立てる生き方」、「微力であっても社会に貢献できる生き方」をしようと決断し、これまでの恵まれた生活を一旦捨てて、ほんとうに後悔のない人生を送るために、株式会社エヌアンドジェイを立ち上げました。これからは精一杯、「人のため」、「お互いのため」そして、「みんなのために」、頑張らせていただく所存です。